END OF THE WORLD






戦争が終わるまで奴隷制度が長らく続いていたこの国は、あの頃と比べれば恐ろしく変わっていた。

まだこの国がテラルと争い続けていたその昔、貧民街で奴隷として売られそうになっていた私の手を掴み、自分の元に置いてくれたのが今のあのアベルだ。

----若いのに凛とした姿で、奴隷商人と対等にやり取りをしていたあの時。

高額な銭を払い、私を抱きしめてくれた。
涙が出るくらい彼に感謝をした。

(はじめて、人の温もりがあったかいと思った)



「彼に一生ついて行こうと思っていましたね、」

「今もそうだろうに」

「はは、今は身分が違いますよ。
もうただの軍見習いだった彼じゃない、トップに付く実力を持った一国の英雄ですから」


遠く離れてしまった、私の恩人。
この想いすら、伝える事すら許されない関係性。幸せじゃないか、と何回言い聞かせたんだろう。


「…はやく、結婚してしまえばいいのに」

「この老いぼれとしては、君と孫のアベルがそうであってほしいのだが」

「はは、流石にわきまえてますよ、私だって。
…それに、アベルには一生を捧げたい女性がいますから」


私が彼を想い続けるように、彼にも想い続けている存在がいる。その存在がこの国の宝であっても彼と釣りあえる、随一の姫が。


「…レオナ姫は、ご結婚されるそうだ。テラルの王子と」

「……そうですか」



国の為に引き裂かれるなんて、可哀想な運命だと誰が笑えるだろう。

(国が幸せでも、個人は幸せになれないのですね)