「でもね、奪われた」

「奪われた…?」

「そう」

「…誰に?」





予想はつく。


きっと私が誠実な人だと、ずっと好きだった人。





「ゆずちゃんのお兄ちゃん、晶だよ」





でも、お兄ちゃんがそんなことするなんて…





「俺の気持ちを知っていながら、俺に内緒で付き合ってたんだってさ」

「そんな…」

「ゆずちゃんが知らない過去に何やったかなんて、わからないんだよ」

「きっと先生に言えなかっただけです…!
罪悪感は絶対あった。先生を傷付けようと思ってやったわけじゃないと思います!」





咄嗟にお兄ちゃんを庇うような口ぶりになってしまう。


でも、お兄ちゃんがそんなことするなんて信じられないんだ…





「わかってるよ。
俺もそんなことわかってる。でも、辛いもんなんだよ…隠されてた、騙されてたって感情が生まれてしまう」





お兄ちゃんと先生の過去。



私が知るはずもない、考えもつかないような過去。




でもそれなら…