「…先生とは何もないよ」

「そうか…」





お兄ちゃんは私に近付いてきて、ふわっと抱きしめた。





「おっ、お兄ちゃん?!」





ただそれだけのことなのに心臓がバクバクしてうるさい。




大好きなお兄ちゃん。



大好きなお兄ちゃんの匂い。





「…よかった」





さらに強く抱きしめられる。



今しかない、そう思った。





「私…お兄ちゃんが好きなの。
ずっとずっとお兄ちゃんだけが」





すると、体が離される。



…え?





「俺も、ゆずが好きだよ。
でも…ダメなんだ」





何がダメなの?


やっぱり妹にしか見えない…?


私は…意識してもらえないの?





「…そう、だよね」

「ごめん…」





わかってた。




わかってたけど…


先生とのことを執拗に聞いてきたり、あんなに優しく抱きしめてくれたから、てっきりお兄ちゃんも私を…なんて。



ただ都合のいい考えでしかなかった。