館の中はいかにも貴族の屋敷といったようでとても綺麗な内装だった。
「まま!ぱぱ!」
リオンは館に入るなり親を呼ぶ。
ひとりじゃない…?
「リオン!どこに行っていたの?」
綺麗な女性がエントランスに顔を出す。
「っ…狩人ですね」
女性は不満そうに眉を寄せ悲痛そうに叫んだ。
「娘を奪わないで!!!」
膝から崩れる彼女にリオンは走りよって頭を撫でた。
「大丈夫だよ!
お姉ちゃん達、遊んでくれるの!」
「……リオン、後で遊んであげるから部屋に行きなさい。」
女性はリオンにどこかへ行くように促して私達を見た。
「こちらへ…お茶、は飲みませんよね。取り敢えず話しましょう。」
どうやら彼女は人間らしい、よく見ると少し窶れていて疲れたような顔をしていた。
肌も荒れている。
『リオンちゃんは…七年前からずっと“あのまま”なんですか?』
「えぇ…どうぞ座って。」
リビングに案内されて座ると彼女は夫らしき人を連れてきた。
「私はこの館の主…エリオス・ブラットレイです。彼女は私の妻のウィーナ。」
ブラットレイといったら数年前に伯爵として名を馳せた人物だった。
彼等はリオンちゃんが行方不明になってすぐに亡くなった筈だ。
悲劇の一家として一時期大きく取り上げられた。
『…あなた方は、魔法か神の力でも持っているんですか?』
そうでなければ、この館は普通の人間でも見つけられる筈だ。
「もっていないわ…リオンも、数年前に失ったの。」
「じゃあ、リオンは幽霊だとでも?」
「違う…あの子は生きている。」
『…はっきり、言ってください。』
私はふたりを睨んだ。
時間が無い…こんな中途半端なことをしている暇はないんだ。
ふたりは観念したのか重い口を開く。
「リオンは…ZENOによって蘇生されたんだ。」
は…?
「けど、何年もあの子を見ているうちに気付いたの。この子は…リオンじゃないって。」
『リオンの魂をZENOに売ったの!?』
「知らなかったんだ!!!」
エリオスは悲痛そうに顔に手を当てた。
「何年経っても歳を取らない、泣かない、怒らない、嫌いだった食べ物も美味しいと言って笑っている…。あの子は、もうリオンじゃないんだと…。」
「この森の泉であの子は溺れて…私達はどうしていいかわからなかった。気付いたら目の前に…綺麗な男の子がいたの。
その子は、この子を生き返らせてあげる代わりに、魂をもらうって言ったの。あの時は混乱していて思わず契約してしまったわ。」
綺麗な…男の子
リオンの魂はその男の子に奪われて、今は乗っ取られている…
ZENOはそんな小賢しい真似はしない。
『神堕ち達の仕業ね…』
「ほかの神の血を体に吸収しているからとても強い…これは予想以上に厄介だね。」
私達は彼女を救わなくてはいけない。
これはどうやって救うものか、だんだん分かってきた。

