広い邸の中を暫く歩くとひとつの扉の前に案内された。
「俺の案内はここまでだ。」
セスさんはそういうと踵を返して歩いていく。
もしかして、報告しないでくれるのか?
いや…期待はしないでおこう。
それより、今は目の前にある問題から片付ける。
ーコンコンコン
「入りなさい。」
女の人の声が扉の奥から聞こえた。
マスターは女性なのか?
「『失礼します』」
中に入るとそこは執務室だった。
窓奥の机の前に立っているのは金髪を丁寧に結った真面目そうな女性だった。
赤渕の眼鏡の奥から見える緑色の瞳は鋭く強い意志を感じられる。
「よく来てくれたわね。
私は副協会長のエリザベス・シード。
マスターは今不在なの、代わりに今回の試験内容について説明するわ。」
エリザベスさんは一枚の似顔絵を私達に投げた。
そこに描かれていたのは無邪気な笑顔を浮かべる可愛らしい少女だった。
「この子は七年前に行方不明になった少女で最近その人物らしい姿が確認されている。
その少女かは定かではないけれど、この都外れにある森の館にいるそうよ。
そこで、今回の任務を言い渡すわ。
“少女を救え”
これがあなた達の試験内容よ。」
「…そんな、ことでいいんですか?」
ユンは動揺しているように顎に手を当てた。
いや、わかっているはずだ。
そんなに容易い試験ではない。
「えぇ、期限は明後日の日の出までよ。
館に関する地図はその似顔絵の裏に記されているわ。行きなさい。」
四角形の枠が私達の足元に出現した。
この力は空間の神の空間操術
「健闘を祈るわ」
その言葉を最後に、目の前は一瞬真っ黒に染まった。

