「…俺の気持ちにも気付いてる癖に……。」
ふと聞こえたユンの言葉に心が鈍く痛んだ。
時々見せる赤い顔も、荒らげた声も、全部私に対する好意だと気付いていた。
けど、私はそれを見て見ぬふりをしてきた。
ユンと出逢う少し前から私を縛る鎖はいつも“幸せ”を“罪悪感”に変える…永遠の恐怖と後悔の呪縛。
大切な人を失うことへの激しい拒絶反応が襲う。
今まで他人に壁を作りその壁を頑なに守ってきた。
ユン…私は臆病者なんだ。
それを知っても貴方は…壁の破壊をやめない。
「集中しないと怪我するよ。」
『っ…』
無駄のない綺麗な動き、これはまともに攻撃を食らえば骨が折れてしまう。
一歩下がると容赦なく間合いを詰めてくる彼に思わず笑みが零れた。
漸く楽しくなってきた。
「くっ」
一発蹴りをお見舞して後に回り手刀を繰り出すと、ふと映像が頭に流れる。
危ないっ
私は手をクロスして飛び退くが遅く、ルーカスの蹴りが横から直撃し壁に激突した。
ーゴンッ
『ケホッケホ…』
「ミラっ!!」
「おい!大丈夫か!?」
絶対予知もがあっても反応が遅れるほどの素早い動き。
『ケホッ…ルーカス、今の動きを忘れないで。』
「こんな時まで…君には手が上がるよ…」
肋は確実に折れたな…腕も少しヒビが入ってそうだ。
狩人は治療能力が高い。
高いと言ってもそんなに瞬間的ではない、重傷だと一二週間はかかる。
この怪我は数日すれば治る筈だ。
「ミラ、俺が治すよ!」
『いい』
「でも…」
「おいルーカス!ぶっ飛ばさなくたっていいだろ。」
「すまない…夢中になってしまった。」
大袈裟だな…
こんな程度、大したことない。
『ユン、壁直して欲しいんだけど。』
「うん…」
一瞬のうちに直したユンは少し怒っているように視線を外した。
『ルーカス、今日は楽しかった。』
「あぁ…」
『今度銃を教えてよ、それでチャラ。』
「わかったよ」
私は笑顔を作って鞄を持った。
痛みを隠しながら手を振る。
『じゃ…また明日、学校で』

