凪はあたしに視線を向けたまま、ほとんど表情を変えないで言う。


「好きなんだな、母親が」

「……は?」


あたしは思わず聞き返してしまった。

あんな惨めで頭の悪い女、好きなはずないじゃない。


「嫌い、大嫌いよ」

「嘘だね。本当は一番に愛して欲しいくせに」


あたしはゴクンと言葉を飲んだ。

凪の栗色の髪がふわりと揺れる。
あたしはその毛先を見つめた。

瞳は見れなかったから。