不完全美学



あたし達の間に少しの沈黙が訪れた。

まるで空気の重みに堪えるみたいに、凪はじっとして動かない。

あたしはそんな空気を取り払いたくて、口を開いた。


「ねぇ、凪」

「なんだよ」


凪はピクリとも動かないで返事だけ返した。

時折すきま風に揺れる栗色の髪を見つめるあたし。


「あたし、頑張れって言葉は嫌いなの。投げっぱなしの無責任な言葉だと思う」


凪はやっと動いたかと思うと、一瞬あたしに怪訝な目を向けた。