不完全美学


「凪の絵は凄いね。ピカソみたい」


知識のないあたしには、斬新な作風と言ったらピカソくらいしか思いつかないのだ。

凪は何も答えずに整理を続ける。


「いつから描いてるの?」

「忘れた」

「忘れたって何よ」


凪はボリボリと頭を掻いて、手に取った絵を見ながら答える。
その絵は全体に淡い青で、多分水の絵だと思う。


「気付いた時には描いてた。親父の画材が俺のオモチャだったから」


凪は相変わらずつまらなそうな顔をしていた。

それはとても思い出を語る顔には見えない。