校舎の隅の、油絵の具の匂いが染み付いた部屋。 「凪、居る〜?」 凪はいつものように黒い絵に向かっていた。 今日は塗り重ねた黒い絵の具をナイフみたいなので慎重に削っていた。 どうせ削るなら、最初から重ねなければ良かったのに。 「ね、凪。あたし彼氏出来たんだよ」 「ふうん」 「知ってる?教生の藍田さん。凄いカッコイイんだ」 凪はチラリとあたしを見て、少し長めのため息をついた。 「そいつ、俺のクラスの加藤と股かけてるぞ」 凪の言葉にあたしは一瞬ポカンとした。