あたしは凪の腕をつかんだ。 たいていの男が喜ぶ甘い瞳を携えて。 「ねぇ、こっち向いてよぉ」 男がどうすれば喜び、オチるのか、あたしは知っていた。 今まで何度となく繰り返したことだ。 凪はあたしを呆れたように一瞥し、静かに言った。 「欝陶しいんだよ、それ」 身体が人形になったみたいに固まった。 梓はさも面白そうにあたしを見ている。 凪はもうあたしを見なかった。 馬鹿だ、あたしは。 梓を気にするあまり、自分を見失っていた。