「北澤先輩、油絵教えて下さい」 梓が近寄ると、凪は面倒臭そうに何色かの絵の具を出してやっていた。 あたしはその光景にムカムカとするのを感じ、大きく息を吐いた。 凪は無愛想ながらもちゃんと絵の具や筆の使い方を説明しているようだ。 梓はニコニコしながらその説明に相槌をうつ。 「あたし、男待たせてるから行くね」 あたしは自分自身の見えっ張りで素直じゃない性格を恨んだ。 この二人を二人きりにさせたくはないけれど、ここに居るのは堪えられなかった。 ライバルに背を向けるなんて、初めてのことだ。