不完全美学


食器の後片付けはママがしてくれた。

ママはカチャカチャと心地良い音をさせて食器を洗いながら、独り言みたいに言う。


「耳を塞いでばかりいたら、何も聞こえないわよ」


あたしはコップに注いだ水を一気に飲み干す。

全身にじんわり染み渡るのを感じると、あたしは一つ息を吐いた。


「うん。そうだね」


ママはこっちを見なかったけど、横顔が優しかった。

ママはやっぱりママだったんだね。

下らない、可哀相な女だと思っていたけど。

そうじゃなかった。
だってこうやって、あたしを温かく守ってくれる。