本当なら「恋はこういう物でしょ」って引き合いに出すつもりだった。

だけど気付いたんだ。
あたしは恋をしたことがない。


「どうしたの、葉月?」

「あたし……」


気まずいような、恥ずかしいような気持ちに襲われる。


「あたし、恋を知らないみたい」


真弓は少し驚いたようだったけど、すぐに優しい表情になった。

ぎゅっと握りしめたあたしの手にそっと触れる。


「葉月にとって恋愛はゲームだったもんね」


あたしは素直に頷く。
まるであたしは小さな子供で、真弓がママみたいだ。