扉を開くと同時にあたしが感じたのは、纏わり付くような油絵の具の匂いだった。 中は薄暗くて、壁一面にかけられた絵が少し不気味に見える。 「お邪魔、しまーす……」 シンと静かな部屋。 床にも沢山の絵が転がっている。 北澤君、居ないのかな。 今日は部活ないのかな。 あたしは転がったキャンバスや絵筆なんかの間を、ウロウロと歩き回った。 部屋の真ん中には、いかにも描きかけですって感じに置かれたキャンバスと椅子がある。 あたしはその絵を覗き込んだ。