それからしばらくは素敵な場所で自由に過ごして、本当に幸せだった。


ここではなんでも私の願うままだった。


読みたいと思った本はポンと現れたし、別に、喉は乾かないしお腹は減らなかったけど望めば、紅茶だってケーキだってなんでも出てきた。


それに、とびっきり、一番素敵なのはこれ!


「ジャングルになれ―――――――――――!」



願いを言葉に落としてゆっくり目を閉じる。


しばらくして目を開けばそこは自分の望む場所


ワニも像もいなければ、鳥の一羽だっていないけど。


ある時は花畑、ある時は海に浮かぶ南の島、またある時はお菓子の国


楽しいことを沢山したけど、だんだん寂しくなってきて…結局はどこまでも広がる草原と、たったひとつだけの小さな丘に落ち着いた。


それからは毎日、丘の上の木のそばに座り込んで飽きるまで本を読んでつまらなくなったら寝て、そんな繰り返しだった。


そしていつも通り、本を広げてまどろみ始めた頃…


"スーッ…スーッ…スーッ"


(…??誰かいる???)


こっそり木の反対側を覗き込むと…彼が、私が一番愛した男性«ヒト»が、気持ちよさそうに眠っていた。



―――!!!


雅也さん…。会いに来てくれての…?



でも……どうして彼がここに?

死んでしまったの?

…そんなの嫌!!


喜びと驚き、それから不安でいっぱいになりながら、必死で声を振り絞って彼の名前を呼ぶ。


「…雅也さん――――。」