一途な社長の溺愛シンデレラ


 結城社長は、竜崎のあまりの言い草に呆然としている私に向き直り、焦るでも弁解するでもなく、申し訳なさそうな顔で言った。

「そいつの言うとおり、去年起こしたばかりの会社で、正直、経営が安定してるとは言い難い。だから、君もよく考えて決めてほしい」

 弱気な言葉とは裏腹に、社長の目には火がともっているように見えた。

 そのとき頭に思い浮かんだのは、大海原に漕ぎ出そうとする一そうの舟だ。

 手漕ぎボートのような小さな舟は、潮に揺られ大波に遊ばれ今にも転覆しそうなのに、海中の巨大な影に守られながら海を渡っていく。

 未知の行路を探す小さな舟と、それを見守るように海中を泳ぐ巨大なクジラ。

 そんなイメージだった。