一途な社長の溺愛シンデレラ


 外出中だったのか御池さんの姿もなく、社長のデスクにはなぜか竜崎が座っていた。

 当時、三好エージェンシーで一年目だったはずの竜崎明音は、その頃からデザート・ローズに一服しに来ていたらしい。

「あれ? なんすか、その子」と首をかしげる竜崎に、社長は私のほうをちらと見た。

「スカウトしてきた。グラフィックデザイナーとして、働いてもらいたいと思ってるんだ」

 私の個展のことを聞くと、竜崎は「へええ」と人形のように整った顔に皮肉な笑みを浮かべた。

 それからオフィスを見学に来た私を逆に品定めするような目でじろじろ見回して、鋭く言い放った。

「やめとけやめとけ。ここ、見てのとおり小さいし、いつ潰れてもおかしくないから」