「亜沙香さんから就職口を探してるって聞いたんだけど、よかったら、うちに見学に来ないか?会社、すぐそこなんだ」

 あまりにも性急な話の中で、この人は大学生くらいにしか見えないのに社長なのか、と驚いたことだけ強く印象に残っている。

 詐欺かなにかじゃないかと疑う気持ちもあったけれど、自分の作品を面と向かって褒められたことは、やっぱり純粋に嬉しかった。

 そして、「遼介くんは怪しい人じゃないから大丈夫よ」という亜沙香の言葉に背中を押される形で、私ははじめてデザート・ローズに足を踏み入れた。


 当時はまだ西村さんも絵里奈もおらず、だだっ広い空間に机が三つ置かれ、いたるところに資料や書類が積み重なっているだけだった。