もちろん、一介の高校生にギャラリーを借りられる財力はない。

 私にあるのは、それまで制作してきた作品だけ。

 そんな私に、ハルカは格安でギャラリーとして店舗を提供してくれるカフェSlo-Moを紹介してくれた。

 付き添いの萌といっしょに突然訪れた私に、Slo-Moの店主、松橋亜沙香はとても親切で、サンプルとして持ってきていた作品を見ると、無料で店内の壁を貸すと言ってくれた。

 そうして私ははじめて、現実世界の人々に、自分の作品を披露する機会を得たのだ。


 個展を開いたからといって、それがすぐ仕事に結びつくとは思っていなかった。

 ただ現実世界の人たちが、私の作品を見てどんな反応を示すのかを知る、いい機会だと思った。

 12歳でリンクトの投稿ボタンを押したときと、同じ気持ちだったのかもしれない。