カップを受け取りながら頷くと、亜沙香はいつものように優しく微笑む。

「今日の沙良ちゃん、すごく素敵よ」

「……ありがとう」

 亜沙香の笑顔に見送られながら、私はガラス戸を押し開けて、明るい日差しが注ぐ通りに出た。



 4年とすこし前、私はカフェSlo-Moの店内で、はじめて結城遼介に会った。

 そのときからすでにSlo-Moの常連客だった彼は、壁に等間隔に並べられたアート作品を熱心に眺めていた。

 私はそのとき18歳の高校3年生で、季節は冬だった。

 高校の担任に紹介された会社の面接は形式上のもので、ほとんど採用されるという話だったにもかかわらず、私はそのすべてで落ちていた。