私はきっと、恋愛感覚だけではなくて、人として、何かが大きく欠落している。
そう思っても、それが何なのかを見つけ出すことはできない。
女の子たちを見ている私に気付いたのか、絵里奈が声を弾ませた。
「ほら、沙良ちゃんも試しにああいう格好してみたら?気分転換だと思ってさ。気持ちが変われば恋が生まれるかもしれないし、沙良ちゃんならなんでも似合うと思うんだよね」
そう言ってから思いついたように手を打つ。
「そうだ、これから一緒に洋服見に行く?ちょっとくらい帰るのが遅くなっても大丈夫でしょ」
ぽんと頭に浮かんだのは、私のベッドに座って拗ねたような顔をする社長だった。
大量の服は、紙袋と一緒にベッドの脇に積み重ねたまま手をつけていない。
「服なら、ある」
「え、そうなの?」
「うん。試しに今度、着てこようかな」
恋とか、愛とかはよくわからないけれど、せっかく社長が買ってくれた服を一度も着ないのは、なんだか悪い気がする。
一度心の中で決めると、不思議と気持ちが軽くなったような気がした。

