考えてみても、よくわからなかった。

 ただひとつ言えるのは、私が社長を信頼しているということだ。

 そうでなければ、あんなことを口にしたりしない。

 抱く?――なんて。

「まったくもう、沙良ちゃんはほんと変わってる」

 何も答えない私に焦れたように言いながら、絵里奈はため息をついた。

「女子はふつう、恋愛話が大好きなのにな~」

 歩き出す絵里奈を横目で見てから、私はショッピングビルの入口でおしゃべりをしている集団に目を向ける。

 友人同士で買い物に来ているらしい彼女たちの装いを注意して見てみる。

 春色のスカートに、明るい色合いのブラウス。

 大胆に脚を出し、学生風の彼女たちは生きている喜びを全身から溢れさせるような顔で笑っている。

 華やかだな、と思った。

 パーカーにジーンズといういつもどおりの自分を省みる。でも彼女たちとの差は、服装だけではないと思った。

 私にはきっと、表情が足りない。

 絵里奈のように映画を観て泣くことも、往来を行く彼女たちのように友人同士で笑い合ったりすることもない。