ふたたび御池さんに耳を掴まれそうになり、とっさにかわす。
「てめ」
「もう御池さん落ち着いて。沙良ちゃんはピュアっ子なんですよ。だからこそ、あんなにもすごいデザインができるんですって」
絵里奈がフォローになっているような、なっていないようなことを言って、私を見下ろした。
「それじゃ沙良ちゃん、一緒に映画館に行こう!いいですよね社長?」
「映画館?」
私と社長が同時につぶやくと、絵里奈は得意そうに片目をつぶった。
「今話題の恋愛映画を見て、恋とは何かを学ぶの!」
「出たよ。女は好きだよなあ、そういうの」
だるそうに言う御池さんに、絵里奈はふんと鼻を鳴らす。
「そういうの、が好きな若い子がブックMAPのターゲットなんだから、いいじゃないですか!ねえ社長!」
「わかったわかった」
根負けしたというよりは、面倒になったという様子で、社長は椅子に腰を下ろす。
「それじゃ行ってこい。ただし、しっかり勉強してこいよ」
「やった!じゃ、沙良ちゃん行こう」
社長からちゃっかりチケット代を受け取る絵里奈に引きずられるようにして、私は会社をあとにした。

