正直言って邪魔だけど、相手をするとキリがないので今度こそ無反応を貫いて手を動かした。
「おまえのデザインて毎回評判がいいんだよ。うちの部内にもファンがいるくらいだし。……なあ、おまえ、うちの制作部に来る気ない?」
ぐいとあごをつかまれて、強引に振り向かされた。
目の前に、竜崎の顔がある。
社長と同じように整っているけれど、彫りが深く男性的な雰囲気の社長と違い、竜崎の造作はあくまでも上品で人形のように隙がない。
そこには、相手に容易に踏み込ませないような、無言の拒絶感がある。
その点においては、私も同類なのかもしれない。
「化粧してちゃんとした格好すれば、おまえでもうちの会社で浮かなそうだし。な、そうしろよ。こんなちっちゃい会社にいたらいつか共倒れになるぞ」
「こんなちっちゃい会社で悪かったな」
私の顔に伸びていた竜崎の手を、社長がつかんで引き離す。
いつのまに近くに来たのか、社長が真正面から竜崎を見据えていた。
ふたりとも背が高いけれど、並んで立つと社長のほうがわずかに上背がある。

