「よくある話だよ。この業界はいかに根回しするかが肝心だしね。下請けにわざと採用されない企画を提案させて本命の見栄えをよくするとかさ。うちもやってるし」
「なっ!?」
さらりと内情を暴露した竜崎に西村さんの顔が般若と化した。
「はは、いやだな。ここにはそんな当て馬制作、頼んでないですよ」
ちらりと社長を見やると、竜崎は西村さんのデスクを離れてふたたびこちらに向かってくる。
「デザート・ローズさんにはいつも世話になってますし」
背後にやってきた台風男を無視して私は作業を続けた。
黒と紫と赤。頭のなかで固めたひとつのイメージを画面上に描きだしていると、背後で息をのむ気配がした。
「おまえって、本当にデザインセンスだけは天才的だよな……」
振り向くと竜崎が後ろから身を乗り出すようにして画面を見ている。
食い入るような目が、ふとこちらを向いた。
「なんでこんな発想ができるんだよ。おまえの頭の中ってどうなってんの」
またしても頭をつかまれてぐちゃぐちゃに撫でまわされる。

