「そう堅いこと言わずに。いい話も持ってきたんすから」
言いながら、絵里奈に紙袋を差し出す。
「はい絵里奈ちゃん。今日の差し入れはキャラメルクッキーサンドだよ」
「……きゃーこれって丸角デパートの限定品じゃないですかぁ、さっすが竜崎さん」
「あはは全っ然心がこもってないね、そういうとこ好きだよ絵里奈ちゃん」
真顔のままはしゃいだ声を出せる絵里奈と、にこにこ笑いながら本心を見せない竜崎は、実は似た者同士なんじゃないかと私はこっそり思っている。
「今お茶淹れてきますねー!」
真顔のまま給湯室に向かう絵里奈を笑顔で見送ってから、竜崎はくるりと振り向いた。私と目が合うと「おっ」と驚いたような声を出す。
「なんだよ、誰かと思ったらおまえか」
他人のパーソナルスペースなんておかまいなしの彼は、私に近づくと無遠慮に視線を注いでくる。
「髪さらさらじゃん!へえ、こうやって下ろしてるとちゃんと女に見えるなぁ」

