一途な社長の溺愛シンデレラ


「くそう、黎明堂め。大手だからって、でかい顔しやがって……!」

 西村さんの大きすぎるひとりごとが終わる前に、ドアベルが音を立てた。

 全員の視線が入口に注がれる。

 現れたのは、細身のスーツをぱりっと着た男だった。

 女みたいなきれいな顔で私たち4人の視線を臆することなく受け止め、にこりと笑う。

「あれ、今呼んだ?大手広告代理店のやり手営業マン、竜崎明音(りゅうざきあかね)が来ましたよっと」

 つかつか入ってくると、男は真ん中の共有テーブルに紙袋を置いた。フロアの四方に設置された私たちのデスクをぐるりと見回し首を傾げる。

「んん?なんか空気重くないすか?」

「竜崎、なにしに来た」

 つまらなそうに言う社長に、自称やり手営業マンは苦笑する。

「ご挨拶だなぁ。見ればわかるでしょ」

 テーブルに置いた紙袋を軽く持ち上げると彼は白い歯を見せた。

「差し入れ、と、一服しに」

「おい、うちは休憩場所じゃないぞ」