休憩がてら給湯室に向かい、自前のマグカップに冷蔵庫から取り出した紙パックの中身を注ぎ入れる。そこにカフェカップの残りを足して、レンジにかけた。
そのとき、ドアベルが鳴って人が入ってくる気配がした。
「なんですかあれ!完全に無駄足じゃないですか!」
「悔しいが……今回はもう仕方ない」
めずらしく憤っている西村さんを、社長がなだめながらフロアに入ってくる。
「おかえりなさい」
何かを悟ったらしい絵里奈が、控えめにふたりに声をかけた。
「なにかあったんですか?」
「聞いてくれよ眞木ちゃん!俺らのプレゼンのあとに控えてたの、どこだと思う?黎明堂だよ!」
「え、あの黎明堂?」
「そうだよ!競合コンペなんて表向きで、裏ではとっくに黎明堂に決まってる、出来レースだったんだよ!」
「悪い、俺の情報収集が甘かった」
「いえ、社長のせいじゃないですよ!ほかの五社もぽかんとしてたじゃないですか!だいぶ巧妙に隠してたんですよ!」

