私と同期の――といっても彼のほうが五歳年上だけれど――西村秀樹(にしむらひでき)はメガネをかけたおとなしいタイプの男で、いつも淡々と仕事をしている。
得手不得手がはっきりしている彼は、どちらかというとデザインよりプログラミングのほうが得意で、特に女性向けの企画を考えるのは苦手だったはずだ。
私の問いかけに、絵里奈がつけまつげで拡張した目を楽しそうに細めた。
「愛の力ってやつじゃない?」
「アイ?」
「西村さんの彼女が、コスメス社の美容マスクを愛用してるんだって」
「それが西村さんとどう関係するの?」
絵里奈はあっけにとられたように私を見ると、ため息をついた。
「まったく沙良ちゃんは……」
つかれたようにつぶやいたかと思うと、キッと顔を上げ、私の机に置かれたカフェカップを指さす。
「自分が愛用してる物のブランドイメージを彼氏が作ったなんて、めちゃくちゃ鼻が高いじゃない!惚れ直すこと間違いなし!そして愛はより深まる!」
「……そういうもの?」
「そういうもの!」

