「いいよ。俺も悪かった。いきなりすぎたな」 掴んでいた私の手に指を絡め、そのまま口もとに持っていく。 「ゆっくり考えればいい」 私の手に唇を落として、社長は微笑んだ。 凹凸のはっきりした顔が対向車のライトに照らし出され、また薄闇に沈む。その背後で、夜の景色がとめどなく流れていた。 深い海の底を進むように、車は走り続ける。 つながれた手のぬくもりが、私の血管を伝って心臓に作用しているみたいだった。 バクバクと激しく脈打って、今にも胸が破裂しそうだと思った。