国道を滑るように進んでいく車の後部座席に並んで座りながら、私はそっと社長を見る。
彼は車に乗り込んでからずっと、物思いにふけるように窓の外を眺めていた。
なにを考えているのだろう。
じっと動かない彫りの深い横顔を見つめながら、私はさっきまでいた音楽とアートの混沌を思い浮かべる。
「ねえ社長、どうしてみんな、私のことを社名で呼ぶの?」
マンションの前で対峙した麗子さんも、さっきはじめて顔を合わせた結城駿祐も、私をデザート・ローズと呼んだ。
しばらく待ったけれど、社長からの返答はない。
そうかと思えば突然振り向き、私の質問が聞こえていなかったのか、まったく別の言葉を口にする。

