一途な社長の溺愛シンデレラ


 オフィスのドアを開けると、ドアベルの音に重なって社内BGMの音が耳に届く。

 さほど広くないフロアをぐるりと見回すと、事務机に座っている絵里奈と目が合った。

「おはよう。社長たちは?」 

 時刻は午前10時5分前。営業先に直行することが多い御池さんをのぞけば、西村さんも社長もとっくに出勤している時間だ。

「ふたりとも、コスメス社に出かけたよ」

「ああ、美容マスクのプレゼンって今日だっけ」

 ここしばらく西村さんを悩ませていた企画を思い出しながら、私はコートを脱いでパソコンの電源を入れた。

「企画、通るといいよね。西村さんめずらしく気合入ってたし」

 絵里奈のつぶやきには答えず、私は画面上で西村さんの魂が込められた企画書のファイルを開いた。

 コスメス社の新商品である美容マスクのパッケージ案と、西村さんが提案するブランドイメージのデザイン、それからキャッチフレーズに目を通す。

「どうしてめずらしく気合入ってたの?」