「……なに?」
視線を合わせられず、エレベーターの階数表示に目をやりながら答えると、社長が言った。
「来週の金曜、仕事のあとで時間あるか?」
「え? ……うん」
見ると、社長は真顔だった。
「そうか、じゃあちょっと付き合え」
「……わかった」
答えた途端、頭を引き寄せられ、頬に柔らかな感触が残る。
突然のキスに唖然としていると、彼ははっとしたように目を見開いた。
あわてたように顔を逸らし、「詳しいことはあとでな」と言って、逃げるようにオフィスに戻っていく。
耳まで真っ赤にして去っていった社長を見送ってから、エレベーターが到着した後もしばらく、私はその場に立ち尽くしていた。

