一途な社長の溺愛シンデレラ


 女の一人暮らしの家にためらいなく入ってくるぐらいだから、いつか手を出されるんじゃないかと思っていたけれど、それもない。

 冗談半分にこちらから声をかけてみても、さっきみたいに一蹴されるだけだ。

 社長はいったい何を考えて私に親切にしてくれるのだろう。

 食べかけのどんぶりをパソコンデスクに置いて、私は『リンクト』の画面を立ち上げる。

 タイムラインに流れるさまざまなアートニュースを眺めながら、情報の発信者が今どこでなにをしているのかを思い浮かべてみた。

 インターネットを介して、私は世界中の人々と繋がることができる。

 だけど、ただ繋がっているだけでは、相手のことを深く知ることはできない。

 内側に隠された気持ちは、推し量るよりほかにない。
 それは、ネット世界でも現実世界でも、同じことだ。

 ふと、さきほどの自分の投稿が目に入った。

《今日、少年に間違えられた》

 あるいは、と考える。

 社長はたんに、少年に間違えられるくらい薄い私の体に、欲情しないだけかもしれない。