ベッドから下りて社長に布団をかけ直し、私は無防備な寝姿をしばらく見つめた。

 若くして会社を立ち上げた結城遼介は、毎日息つく暇なく働いている。それなのに、忙しい時間を割いて、私の世話まで焼いてくれている。

 すべては私が不甲斐ないからだけれど、それでも面倒見がいいという言葉だけでは片づけられないほど、社長が私を大事にしてくれていることはわかる。

 たとえそれが、“大切な社員だから”だとしても。

『沙良ちゃんは社長を男として見てるってこと!?』

 いつかの絵里奈の言葉を思い出しながら、私は布団に上半身をあずけて端正な顔を眺めた。

 恋とか、愛とか、そういう感情はまだよくわからないけれど。