「それじゃあ、りんごでも剥くか」

 立ち上がりかけた社長を制して、私はキッチンの戸棚から果物ナイフを取り出す。

「私がやる」

「なんだよ、できるのか?」

「社長がやってるの、いつも見てたから」

 まな板の上に真っ赤なりんごを置いて、思い切りよく四等分にカットする。力の加減が難しくて、この時点ですでに大きさが不揃いになった。

「おいおい、あぶなっかしいな。ちゃんと左手を添えろ」

「座ってて」

 後ろから覗き込まれると、集中できない。