「なんだか、疲れてる?」

 背中を丸めている姿を珍しく思いながら尋ねると、彼は力なく笑った。

「そう見えるか?」

「今日は朝から、やたらとため息をついてる」

「まあ、いろいろあったからな」

「太陽石鹸に趣いて見合いの話を断ったり、竜崎にからかわれたり、社員に昼食を奢らされたり、絵里奈に昔の女のことで詰め寄られたり?」

 よどみなく言う私に、社長は苦笑を漏らす。

「そんなのは全部かわいいもんだけどな。さて、遅くなったけど飯つくるか。なに食いたい?」

「あんまりお腹はすいてない。昼、しっかり食べたし」

 それに、どういうわけか胸が詰まっていて、料理を作ってもらってもなにも喉を通らないような気がした。