私が出会う前の結城遼介は、どんな人生を歩んでいたのだろうか。
三好エージェンシーでアルバイトをしながら、自分も会社を立ち上げようと思いついたのか、それとも、会社を起こすために広告代理店でアルバイトを始めたのか。
忙しく立ち回るそんな結城遼介を、彼のミューズは支えていたのだろうか。
ちくりと、小さな針で刺されたように胸が痛んだ気がした。
カフェSlo-Moではじめて顔を合わせたときには、社長にはすでにそんな特別な存在がいたのだ。
その相手は、社長の恋の相手だったのだろうか。
なんだか胸焼けがした。
きっと食べ過ぎだ。
グラスの水を口に含んで、ゆっくり飲み込む。冷たい水が、喉を圧迫するように身体の奥へと流れていった。

