一途な社長の溺愛シンデレラ


「何言ってんだよ、水くせーな。いつ来るかいつ来るかって、ずっと待ってたんだから。ほんと、よく電話くれたなあ」

 頭にバンダナを巻いたその人は、店名がプリントされたTシャツに前掛けというほかの店員と同じ格好をしているけれど、周りとくらべるとずいぶん年嵩だった。

 どうやら店主らしい彼が、口ひげを蓄えた人の好さそうな顔で朗らかに笑う。

「仕事忙しいんだって?明音くんが言ってたよ」

「いや、竜崎のほうがよっぽど忙しいと思いますよ」

 話の流れから察するに、この店には台風男もよくやってくるらしい。

 さっき社長が「学生のとき」と言っていたから、三好エージェンシーでバイトをしたあとにふたりでこの店に寄っていたのかもしれない。