「あーなるほど、社長はココの昔馴染みなんですね」
レンゲを口に運んで麺を一口食べると、絵里奈は目を丸くした。
「うわ、風味がいい!あっさりな見た目なのにすごいコクですね!」
絵里奈の向こうではメガネを外した西村さんが黙々と麺をすすっている。さっきまでぶつぶつ文句を言っていたのに、食べ始めたとたん不満を忘れてしまったように器に夢中になっていた。
言葉が出ないほどおいしいということかもしれない。
「よお遼ちゃん、久しぶりじゃねーか」
作業が一段落したのか、キッチンの奥で忙しそうに動いていた男性スタッフが急に声をかけてきた。
社長が箸を止めてにこりと笑う。
「どうも。ご無沙汰してます、佐々野さん。今日は無理を言ってすみません」

