一途な社長の溺愛シンデレラ


「料理はたんに好きなだけだし、自己管理なんてしてないし。だいたい俺は、そんな大層な人間じゃないぞ」

 ……そうだろうか。

「お待たせしました」

 私たちの前に順番にどんぶりが置かれた。透き通ったスープに焼き豚とネギ。社長と西村さんのどんぶりには、麺が見えないくらい肉が重なっている。

 私に箸を差し出しながら、社長がこっそり笑った。

「さすがの俺でも、これはつくれない」

 スープを口に運ぶと、想像していたよりもずっと濃厚な旨味が舌の上に広がった。細い麺がスープと絡んで絶妙な味わいになる。

「おいしい」

「だろ? この店には学生のときよく通ったんだよ。それがいつのまにか有名店なんて呼ばれるようになって、来にくくなってさ」