一途な社長の溺愛シンデレラ


 ついさっき来たばかりの私たちは行列には並ばず、人目を避けるように店の裏側から入ってきた。変だなとは思っていたけれど、どうやら社長の人脈効果による特別待遇だったらしい。

 西村さんの隣に座った男性客が、運ばれてきたどんぶりにレンゲを沈めて麺をすすりはじめた。濃厚な鶏出汁と醤油の香ばしい匂いがあたりに立ち込めている。

「社長でも、こういうところに来るんだね」

 厨房に重ねられたラーメンの器を見ながらつぶやくと、社長は不思議そうに振り返る。

「ん?来るだろ、普通に」

「自分でいろいろつくれるし、自己管理が徹底してる感じがしたから、少し意外」

 それに、と私は心の中で付け加える。

 育ちのいい人はファストフードやジャンクフードを食べないものだと思っていた。