私と絵里奈から食い入るように見つめられ、社長は気まずそうに眼を逸らす。それから思い出したようにデスクに着いた。
「見合いの話自体を断ったから、先方にも会っていない」
絵里奈の表情がわずかに曇る。
「太陽石鹸て、沙良ちゃんが作ったデザインを採用してくれたところですよね。そんなところのお見合いを断るって、大丈夫なんですか?会いもしないでなんて……」
「まあ、田中社長は気さくな人だから大丈夫だとは思うが……。なにか言ってくるようであれば、それはそれで仕方ないよ」
万が一うちとの取引をやめると言われても、社長は自分を売るつもりはないらしい。
それほど大きな会社ではないとはいえ、太陽石鹸は何十年も続く老舗で、うちの会社なんて足元に及ばないほど地盤がある。

