ドアベルを鳴らして帰っていく背中を見送りながら、デザート・ローズの面々はいつもの狐につままれた顔になっていた。
「本当に、いいヤツなんだかイヤなヤツなんだか……」
西村さんがぽつりとつぶやくと、社長が首をわずかに傾ける。
「昔っから、つかみどころがないんだよなアイツは」
「でも、辰巳屋のどら焼きを手に入れられるなんて、只者じゃないことは確かです!」
絵里奈の力強い主張に、一同の肩から力が抜けたようだった。
「社長、太陽石鹸の社長の娘に会ったの?」
私が言うと、気が抜けた顔をしていた絵里奈が「そうでした!」と社長を振り返る。
「お見合いして断ったんですか?」
「ああ、いや」

