「今日は大奮発で、辰巳屋のどら焼きだよ」
片目をつぶってみせる竜崎に、絵里奈がぱっと顔を輝かせる。
「え、辰巳屋!?予約しないと買えないのに、予約すらなかなか入れられないっていうあの辰巳屋ですか!?激レア!」
絵里奈がめずらしく手を叩いて飛び上がらんばかりにはしゃいでいる。ということは、相当手に入れにくいものだということだ。
絵里奈の嘘のない喜びを満足そうに見ると、竜崎は立ち上がって自分のカバンを拾い上げた。
「さて。それじゃあ俺はこれで」
私が出社する前に絵里奈がすでに淹れていたらしいお茶を飲み干すと、竜崎は爽やかな笑顔を見せた。
「また来ますね」

