社長の凛々しい眉がぴくりと反応する。どことなく顔色が悪いように見えて、私は注意深く端正な顔を見つめた。
「竜崎……おまえ、なにをどこまで知っている?」
「結城さんのことなら、だいたいほとんど」
大手広告代理店のエースは、訳知り顔で言った。
「うちの情報網をなめてもらっちゃ困りますよ。結城さんが太陽石鹸の田中社長に気に入られて、娘と見合いしないかって誘われてることくらい、とっくに耳に入ってますから」
「え、社長、お見合いするんですか!?」
それまで貝のように黙り込んでいた絵里奈が即座に反応した。西村さんも驚いたようにメガネの奥の目を見開いている。
私は柔軟剤のブランドイメージをプレゼンした日のことを思い出した。

