「おまえ、ド不器用そうなのに、よくリボン結びなんてできたな」
やっぱりこの男は鋭い。
私の胸元を飾るリボンタイは、何回も結びなおしたうえで奇跡的に完成した傑作だった。
絵や立体物でリボンの形を表現することはできるけれど、自分が身につけた状態であの独特な形を創りだすのはとても骨が折れる作業なのだと、今日初めて知った。
竜崎の右手に、さらに力がこめられる。今ほどかれたら、また同じようにリボン結びをできる自信はない。
「放して」
真正面から見上げると、やり手営業マンの顔に満面の笑みが広がった。
「やだって言ったら?」
絵里奈と西村さんが見ないふりをしながらこちらをうかがっている。

