一途な社長の溺愛シンデレラ


 席につくと、なんとなく気が抜けた。ほっとしたような、がっかりしたような妙な気分になる。

「ここ最近ですっかり女らしくなったなあ。しかも結構いい服だろコレ。お前がハイブランドで買い物とか、想像つかなすぎ」

 口元に皮肉な笑みを浮かべながら、竜崎が私の胸元に手を伸ばしてリボンの形に結んだタイの端をそっとつかんだ。

「どこで買ったんだよ」

「……社長がくれた」

 答えた瞬間、竜崎の目がわずかに見開いた。それから「へえ」と楽しそうに口角を上げる。

「はは、やっぱすごい入れ込みようだな、あの人」

 誰に言うでもなくつぶやくと、竜崎はつまんでいたリボンの端を軽く引っ張った。結び目に固定された生地が、ぴんと張り詰める。