「ん?えーと・・・」
綺麗で 見惚れる笑顔を見せた彼。
その彼が ボーッと立ってるだけの私の前で困ったような顔をした。
ハッと我に帰る私。

「あ!す、すみません」
彼の持っていた私の小説を受け取り、
早歩きで教室へ向かう。
私・・・なんで ボーッとしてしまったの?

彼の瞳が とても綺麗で 見惚れてたなんて。ここに通う男の子なんて 皆 堅物で。あんなふうにニカッと笑う人なんていない。
あ、あれ?そういえば、あの彼は 何でここにいたの?


「みなさん。転校生を紹介します。
七星晃哉(ナナセ コウヤ)くんです。」
帰りのホームルームで、先生が転校生を紹介した。
教室に 生き生きとした顔で入ってきたのは、さっき廊下で ぶつかった あの彼だった。

「七星でーす。俺は庶民なんで、皆と話合わないかもだけど・・・まぁ、よろしくな!」
挨拶も ハキハキして、眩しいくらい。
いや・・・私が いじけないから尚更・・・。

私が ぷい と教卓から目を逸らした時、
彼とちょうど目が合った。
「あ!さっきの!」
彼は私を見つけて、パァァァと尚更 明るい顔をした。
そして、ズンズンと私へ向かってくる。
私は そっけなく下を向く。
なんて声をかけたらいいのか分からない。

「え・・・あの・・・」
彼が私の机の横に立ったので、恐る恐る顔を見ると・・・。
「やべぇ、めっちゃ可愛い」
彼は さっきと変わって真っ赤な顔をして呟いた。可愛いなんて・・・誰にも言われたことなんてない。私も自分で分かるように赤面してしまう。


「お、おい!キミ!一条さんに気安く話しかけるな!庶民のクセに」
さっき、お茶会に誘ってくれた男子が立ち上がって彼を指さした。

「え、話しかけるのもダメなのかよ!?」
びっくりしたように男子を見る彼。
私も男子の声で我に帰った。

「わ、私、もう失礼しますね」
バックを持って昇降口へ向かう。
恥ずかしさと驚きで私の顔は変な事になってるだろう・・・。